溶接機とは?|どんな用途で使われ、どんな種類があるのか
目次
製造現場や工事現場で、日々当たり前のように使われている設備のひとつが溶接機です。 部材を固定し、構造物としての強度を確保する工程において、溶接は欠かせない基礎技術となっています。
この記事では、
・溶接機はどんな現場で使われているのか
・溶接機にはどんな種類があり、何が違うのか
この2点を、分かりやすく整理して解説します。
溶接機とは何か?

溶接機とは、金属同士を熱で溶かし、ひとつの部材として接合するための機械です。 ボルトや接着剤とは異なり、金属そのものを一体化させるため、強度・耐久性に優れるのが最大の特徴です。
たとえば自動車業界では、車体フレームやブラケットなどの部品を組み立てる工程で溶接機が使われています。溶接によって、走行時の振動や衝突荷重に耐えられる構造を実現しています。
そのため、製造業・建設・インフラ・修理といった分野で欠かせない存在となっています。
溶接機はどんな用途で使われている?
製造業・工場

・機械部品の製作・組立
・フレーム、筐体、架台の製作
・自動車・二輪・産業機械部品の溶接
大量生産・安定品質が求められる現場では、溶接機の性能が生産性を左右します。
建設・鉄骨・プラント

・建築鉄骨の接合
・配管・タンク・構造物の製作
・プラント設備の据付・補修
強度と信頼性が最優先される分野、現場対応力の高い溶接方式が重宝されます。
修理・メンテナンス

・機械・設備の補修溶接
・破損部品の肉盛り・補強
・農機具・建設機械の修理
「直して使う」現場では、溶接機はまさに必須工具です。
溶接機の主な種類と特徴
溶接機は、溶接の方式によっていくつかの種類に分かれます。
ここでは、現場でよく使われる代表的な5種類を紹介します。
1. アーク溶接機

棒状の溶接棒を使う、最も基本的な溶接方式です。
電極(溶接棒やワイヤ)と金属(母材)の間に電気を流してアーク放電(強い電気の火花)を発生させ、その熱で金属を溶かして接合する溶接機です。
仕組み
1.電源から電流を流す
2.電極と金属の間でアーク(高温の放電)が発生
3.その熱で金属が溶け、冷えて一体化する
特徴
・構造がシンプルで壊れにくい
・風の影響を受けにくく屋外作業に強い
・建設・補修・現場作業向け
アーク溶接機の特徴は、構造がシンプルで扱いやすい点にあります。外部からガスを供給する必要がなく、溶接棒の被覆によって溶接部分がその場で保護されるため、風の影響を受けにくく屋外作業に強いのが特長です。
また、装置構成が比較的簡単なため故障しにくく、持ち運びやすい点も現場向きといえます。そのため、建設現場や補修・修理など、作業環境が一定でない現場作業で広く使われています。
使われる主な現場
アーク溶接機は、主に建設現場や屋外での作業に使われています。鉄骨の接合や設備の据付、補修作業など、作業環境が一定でない現場でも対応できる点が特長です。 また、機械や設備の修理・メンテナンス作業など、その場で溶接を行う必要がある場面でも多く使用されています。 アーク溶接機は、屋外や現場作業を中心に、柔軟な対応が求められる用途に向いた溶接機です。
2. CO₂溶接機

CO₂溶接機(炭酸ガス溶接機)とは、炭酸ガス(CO₂)を使って溶接部を空気から守りながら金属を接合する溶接機です。正式には GMAW(Gas Metal Arc Welding)に分類され、広く使われている溶接方式の一つです。
鉄や鋼材の溶接に適しており、作業効率と安定した品質を両立できることから、工場内での量産や連続作業を中心に導入されています。
仕組み
CO₂溶接では、まずトーチの先端からワイヤと呼ばれる溶接材料が自動的に送り出されます。このワイヤと母材の金属の間に電気が流れることでアーク放電が発生し、高温の熱によってワイヤと金属が溶けます。
半自動・自動化しやすく、安定品質を出しやすいのが特徴です。
特徴
・コストが低い
・鉄・鋼材の溶接に強い
・作業効率が高い
・スパッタはやや多め
CO₂溶接機の大きな特徴は、作業効率の高さです。溶接棒を一本ずつ交換する必要がなく、ワイヤが連続的に供給されるため、長い溶接や繰り返し作業でもテンポよく作業を進めることができます。
また、電流やワイヤ送り速度を一定に保ちやすいため、作業者による仕上がりのばらつきが少なく、安定した溶接品質を確保しやすい点も特長です。特に製造ラインや量産工程では、この安定性が大きなメリットになります。
使われる主な現場
CO₂溶接機は、主に工場内で鉄製品を溶接する現場で使われています。自動車部品や機械フレーム、筐体など、同じ品質の溶接を繰り返し行う量産工程に適しています。
また、製缶品や鉄骨部材の製作など、屋内で安定した作業環境が確保できる現場でも多く使用されています。 CO₂溶接機は、鉄製品を効率よく、安定した品質で溶接したい工場向けの溶接機です。
3. MIG溶接機

MIG溶接機とは、アルゴンなどの不活性ガス(主にAr)を使って溶接部を空気から守りながら金属を接合する溶接機です。
正式には GMAW(Gas Metal Arc Welding) に分類され、CO₂溶接と同じ系統の溶接方式ですが、使用するシールドガスが異なります。
MIG溶接は、CO₂溶接に比べてスパッタ(溶接時に飛び散る金属粒)が少なく、溶接ビードがきれいに仕上がるのが特長です。
そのため、アルミやステンレスなど、仕上がり品質が求められる材料に強く、製造業の中でも精度や外観を重視する工程で多く使われています。
仕組み
MIG溶接では、トーチの先端からワイヤ(溶接材料)が自動的に送り出されます。ワイヤと母材の金属の間に電気が流れることでアーク放電が発生し、その高温の熱によってワイヤと母材が溶けます。
同時に、トーチの周囲からアルゴンを中心とした不活性ガスが噴き出し、溶接部の周囲を覆います。このガスが空気を遮断することで、溶接中の金属が酸化するのを防ぎ、きれいで安定した溶接が可能になります。
特徴
・溶接後の仕上がり(ビード)がきれい
・スパッタが少なく、外観品質を重視する製品に向いている
・アルミ・ステンレスなど、薄板〜中厚板の溶接に対応できる
・風の影響を受けやすく、主に工場内作業向き
MIG溶接機は、溶接後のビードがきれいに仕上がりやすい点が大きな特長です。スパッタが少なく、後処理の手間を抑えられるため、外観品質が重視される製品に向いています。
また、アルミやステンレスなど、酸化しやすい材料の溶接に適しており、薄板から中厚板まで幅広く対応できます。ワイヤが自動で供給されるため、連続作業がしやすく、作業効率も高い溶接方式です。
一方で、溶接部を守る仕組みが外部から供給されるガスに依存しているため、風の影響を受けやすく、屋外作業にはあまり向いていません。そのため、主に工場内や風の影響を受けにくい環境で使用されます。
使われる主な現場
MIG溶接は、アルミ製品やステンレス製品の製造、精密機器や筐体の溶接、外観品質が求められる部品加工などで多く使われています。自動車や二輪のアルミ部品、食品・医療関連設備の製作なども代表的な用途です。
アルゴンなどの不活性ガスを使用する半自動溶接です。 CO₂溶接と同じ仕組みですが、仕上がりの美しさが大きな違いです。
4. TIG溶接機

TIG溶接機とは、タングステン電極と不活性ガス(主にアルゴン)を使い、非常にきれいで精密な溶接を行う溶接機です。
TIG溶接は、トーチで金属を溶かしながら、もう一方の手で溶加棒を少しずつ加えて接合する溶接方法で、両手を使って作業を行うため、溶接条件のコントロールや手元の安定性が重要となり、丁寧な作業が求められます。
正式には GTAW(Gas Tungsten Arc Welding) と呼ばれ、数ある溶接方式の中でも、特に仕上がり品質を重視する溶接方法として知られています。
そのため、自動車部品、食品機械、医療機器、配管など、見た目の美しさや高い精度が求められる分野で多く採用されています。
仕組み
TIG溶接では、タングステン電極と母材の間にアーク放電を発生させ、その熱で金属を溶かします。タングステン電極自体は溶けないため、溶接は非常に安定した状態で行われます。
必要に応じて、作業者が別途「溶加棒」を手で加え、溶融金属の量を調整します。同時に、トーチの先端からアルゴンガスが噴き出し、溶接部を空気から完全に遮断します。このため、酸化や不純物の混入が少なく、非常にきれいな溶接部が形成されます。
特徴
・溶接ビードが美しく、品質が非常に安定している
・スパッタがほとんどなく、仕上げ・後処理の手間が少ない
・アルミ・ステンレス・チタンなど、薄板や精密作業に強い
・作業速度は遅く高い技術が必要なため、品質重視・少量多品種向き
TIG溶接機の最大の特徴は、溶接ビードが美しく、品質が非常に安定する点です。スパッタがほとんど発生せず、溶接後の研磨や仕上げ作業を最小限に抑えることができます。
また、アルミ、ステンレス、チタンなど、酸化しやすく扱いが難しい材料にも対応でき、薄板の溶接や精密な作業に強いのが特長です。溶接電流を細かく調整できるため、熱による歪みを抑えながら作業ができます。
一方で、溶接速度は比較的遅く、両手を使う作業になるため、作業者には高い技術が求められます。そのため、量産工程よりも、品質重視・少量多品種の製作に向いています。
使われる主な現場
TIG溶接は、ステンレス配管やタンクの製作、食品・医療関連設備、自動車やバイクの高精度部品、アルミ製品の加工などで多く使われています。特に、溶接部の見た目や信頼性が製品価値に直結する分野で重宝されています。
5. スポット溶接機

金属板同士を重ね、電極で強く挟んで電流を流し、接触部分だけを瞬間的に溶かして接合する溶接機です。「点(スポット)」で溶接することから、この名前で呼ばれています。
主に薄い鋼板の接合に使われ、自動車や家電などの量産工場では欠かせない溶接方式です。
仕組み
スポット溶接では、2枚以上の金属板を重ね、その上から電極で強く挟み込みます。
この状態で一瞬だけ大きな電流を流すと、金属の接触部分に電気抵抗が生じ、その部分だけが発熱して溶けます。
電流を止めると同時に、電極で押さえ続けることで溶けた金属が冷えて固まり、板同士が一体化します。溶接は一瞬で完了し、溶接箇所は小さな点状になります。
特徴
・溶接スピードが非常に速く、大量生産・連続作業に向いている
・溶接材料やガスが不要で、消耗品が少なくコストを抑えやすい
・溶接条件を管理しやすく、品質のばらつきが出にくい
・薄板同士の重ね溶接専用で、厚物や複雑な形状には不向き
スポット溶接機の最大の特長は、非常に速く溶接できることです。1か所あたりの溶接時間は数秒以下で、連続作業や大量生産に向いています。
また、溶接材料やガスを使用しないため、消耗品が少なく、作業コストを抑えやすい点もメリットです。溶接条件を機械で管理しやすく、品質のばらつきが出にくいのも量産工程に適している理由です。
一方で、厚い材料や複雑な形状の溶接には向かず、基本的には薄板同士の重ね溶接専用となります。溶接箇所も点状のため、強度は溶接点の数で確保する必要があります。
スポット溶接が使われる主な現場
スポット溶接は、自動車ボディの製造工程で最も多く使われています。車体の骨格や外板の接合には、数千か所ものスポット溶接が施されています。
そのほかにも、家電製品の外装や内部フレーム、スチール家具、金属製キャビネット、事務機器など、薄鋼板を大量に組み立てる製造現場で広く利用されています。
まとめ|用途に合った溶接機選びが重要
溶接方式と向いている現場は以下の通りです。
・アーク溶接 →「屋外作業や補修が多い現場に向け」
・CO₂溶接 →「鉄製品を安定品質で量産したい工場向け」
・MIG溶接 →「外観品質を重視するアルミ・ステンレス製品向け」
・TIG溶接 →「精度と美観を最優先する少量多品種向け」
・スポット溶接 →「薄板を高速で大量に組み立てる量産ライン向け」
溶接機は、「どれが一番優れているか」で選ぶものではありません。
用途・材料・作業環境・求める品質によって、最適な溶接機は変わります。それぞれの特性を理解し、「現場で何を作り、どんな品質が求められているのか」を基準に選ぶことが、溶接機選定で最も重要なポイントです。
溶接機を選ぶ際、新品にこだわらず、条件に合う中古機を検討するという選択肢もあります。
弊社が運営するアセットバンクでは、タイミングに応じて、アーク溶接機やCO₂溶接機をはじめとした溶接機が中古で出品されることがあります。導入コストを抑えつつ、現場に合う設備を探したい場合には、ぜひアセットバンクの掲載情報を定期的にご確認ください。
また、溶接機の売却をご検討されている場合も、お気軽にご相談ください。
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