なぜインドでは中古産業機械の購入が活発なのか
目次
「インドで中古の工作機械が高く売れた」——そんな話を耳にして、「なぜだろう?」と疑問に思った方も多いのではないでしょうか。
とりわけ、年式の古い機械であっても高値が付くと聞くと、「どんなカラクリがあるのか」と、さらに関心が高まるはずです。
一方で、「そもそも古い機械は輸入できるのか」「規制はどうなっているのか」といった制度面への疑問を持つ方も少なくないと思います。
本記事では、なぜインドで中古産業機械が高く売れるのか、また古い機械の輸出入に制限はあるのかについて、他のアジア諸国との違いも踏まえながら、分かりやすく解説していきます。
なぜインドでは中古機械が高く売れるのか
実際、インドでは製造年による一律の輸入制限は設けられておらず、稼働可能であれば古い機械でも輸入・使用されるケースが多くあります。30〜40年前の設備が現役で動いている例も珍しくありません。この規制の緩さ、インド政府が掲げる政策が産業機械を高価で買い取る下地になっていると考えられます。それぞれ順に解説していきます。
インドの輸入規制:年式制限はない
インド外国貿易政策(FTP)によると、中古の産業機械(資本財)の輸入に対して、法律上の製造年(年式)制限は基本的に設けられていません。
ただし「残存耐用年数」の実務審査や、特定品目の制限、環境・安全基準への適合義務は別途存在します。一定の条件を満たせば輸入可能なケースが多いです。「完全に無条件で何でも輸入できる」わけではない点には注意が必要です。
参考:DGFT公式文書 P3より
FTP2023 Chapter 02(PDF)
他アジア国の年数規制と事情
ベトナム
原則として製造から10年以内ですが、一部の産業機械については15年〜20年まで認められる例外設定があります。また、10年を超えていても、ベトナム国内での生産継続に不可欠であり、かつ高い性能(設計能力の85%以上など)を維持していると認められれば、科学技術省の個別審査を経て輸入できる道も残されています。
参考:ベトナム政府公式法令ポータルより
Decision No. 18/2019/QĐ-TTg(中古機械輸入規制)
インドネシア
インドネシアでは、中古産業機械の輸入は品目ごとに個別の基準が設けられており、実務上は製造から20年前後が一つの目安とされています。
また、輸入は原則として機械を自社で使用する製造業者(実需者)によって行われることが求められており、輸入事業者にも一定の制限があります。
このため、中古機械の輸入は制度上、商業目的での自由な取引には制約があり、実需に基づく利用が中心となっています。
中国
中国においては、明確な製造年数による一律の制限は法令上設けられていません。一方で、制度上の各種基準により、結果として古い機械は輸入が難しくなる傾向があります。
中古機械は「旧機電製品」として分類され、制度的に厳格な管理の対象となっています。
輸入の可否は、まずカタログ(輸入禁止・制限・許可の分類)に基づいて判断され、この段階で、環境負荷が高い設備や安全性に問題のある設備、技術的に陳腐化した設備などは、輸入が禁止または制限されます。
さらに、輸入に際しては各種の検査や技術基準への適合が求められ、これらを満たさない設備は通関が認められません。
このように、中国では年式そのものではなく制度への適合性によって輸入可否が判断される仕組みとなっており、その結果として、製造年が古い設備は基準を満たしにくく、実務上は輸入が難しくなる傾向があります。
参考:中国商務部(MOFCOM)
インドの中古機械ニーズの背景
背景には、2014年に Narendra Modi 政権が打ち出した国家戦略「Make in India」があります。この政策により、外資規制の緩和(FDI自由化)や生産連動型インセンティブ(PLI)が導入され、製造業への投資が大きく進みました。
実際に、工業生産指数(IIP)の上昇に見られるように、インドの製造業は拡大を続けており、それに伴って設備投資の需要も急速に高まっています。
一方で、インドでは企業の大半を中小企業が占めており、高額な新品設備を導入できる企業は限られています。
さらに、インドの外国貿易政策(FTP)では年式による一律の制限も設けられておらず、新品に比べ安価に入手することが可能です。
つまり、
「製造業の拡大で設備が足りない」 × 「新品を買える企業が限られている」
この2つが重なった結果、インドでは中古機械への需要が自然と高まっているのです。
補助金制度が中古需要を後押し
インドの補助金制度は設備投資を促進する一方で、諸外国と比べてあらかじめ一定額が支給されるタイプではなく、売上や生産量に応じて給付される仕組み(PLIなど)が中心となっています。このため、設備費そのものを全額カバーするものではありません。
こうした制度のもとでは、企業は初期投資を自己負担する必要があり、導入コストを抑えるインセンティブが働きます。その結果、比較的低コストで導入可能な設備も有力な選択肢となりやすく、中古機械が活用されるケースも見られます。
まとめ
インドは法律上の年式制限がなく、他のアジア諸国と比べて中古産業機械が流通しやすい環境にあります。
Narendra Modi政権が推進する「Make in India」による製造業振興と、中小企業の多さという構造的な要因が、中古機械市場の需要を下支えしています。
一方で、いずれの国においても中古機械の輸入は無条件で認められているわけではありません。環境規制や安全基準、技術基準への適合が求められ、これらを満たさない設備については輸入が認められない場合があります。
そのため、実際の輸出入にあたっては、対象機械の仕様や用途、各国の最新規制を踏まえ、専門家と十分に確認しながら進めることが重要です。
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